牧草という植物

 ・牧草と呼ばれるモノ

 うさぎに与える乾牧草を統括して牧草といいますが、色々な国で
生産され、様々な品種がありますが、うさぎの為に生産され輸入
されている物は一部メーカー品に限られ、一般的に流通している
乾牧草は、牛・豚の飼料として育てられ、輸入されます。

輸入される乾牧草のうち、チモシーの割合は約1/3です。
1/3のチモシーのうち、サラブレッド用の高品質なチモシーは1/10

サラブレッド用の中から、更にうさぎに適した綺麗で上質な物が、
皆さんがうさぎに与えるチモシーとなります。

この事から分かるように、ウサギ用として流通している一般的な
輸入チモシーは最上級クラスのチモシーとなります。

チモシー育成・乾燥に適した土地は、冷涼な農地で、
アメリカのワシントン州のエレンズバーグが有名です。

1年を通して降雨量が少なく、北西の風がチモシーを乾燥させるのに適しているからです。

広大な畑で育成され、機械で刈り取られ、畑で1週間〜10日かけて 乾燥(ウィンドロー)させます。

乾燥させたチモシーは扱いやすいように機械でブロック状にします
が(ベーリング)、ブロック状(ベール)にした状態で、更に水分が12%以下になるまで、 倉庫で自然乾燥されます。

乾燥され出来たチモシーは船便で世界各国へ輸出され、日本にも入って来ます。

1番刈は6月末に刈り取られ、その後ウィンドロー・ベーリング・乾燥ののち輸出
2番刈は、8月末に刈り取られ、1番刈と同じ工程を経て、輸出されます。


 牧草の異物混入

 牧草の育成・刈り取り・乾燥・圧縮成形とすべて自然の中、畑で行われます。
自然の中で育成した農作物である以上、昆虫や雑草の混入があります。
土を使って育成する為、石や土の混入もあります。
機械で成形する際に、牧草を縛る紐やビニールテープの切れはしの混入もあります。

ベールの状態で輸入された物を、各ペットメーカーは機械でパッケージしますが、 その際に目視と手作業で異物を取り除いています。
私のような個人経営で個人的にベールを仕入れ小袋にパッケージする際も、 手作業と目視で異物を除去しますが、
除去漏れがあるのも事実です。

飼い主さんには、うさぎへ与える際に最終チェックとして異物混入を確認して欲しいと思います。


 ・牧草と農薬

 農薬散布するには、農薬を購入し、散布機を導入して人手を使う事になりますので 【 農薬散布=経費 】となります。

産業動物の飼料の中で、乾牧草というのは高価な物ではありません。 そんな価値の低い生産物に経費を掛ける事は避けたいのが生産者です。

そして、その牧草を主に食べるのは、最終的に人間の食料となるお肉や 牛乳などを摂取する為に飼育する産業動物です。
安全性の規制は年々改定され、現在も牧草育成に利用する農薬に関する厳しい規制があります。

完全無農薬と断言出来るのは本当に1部の生産者だけですが、
それ以外の生産者も有害になるような農薬散布はしていない
(経費的・規約的に出来ない)という事です。

十分な農薬散布がされていれば、虫の混入、雑草の混入も無いでしょう。 それら異物の混入があるという事は、自然に近い状態という事です。
さらに、農薬を使って生産性を上げるのではなく、品種改良で生育が旺盛で、 病気と虫に強い品種の開発と研究は日々行われています。

私達が普段当たり前のように触っている『チモシー』ですが、 そのチモシーを開発し育成させ、流通させている沢山の方々の おかげで、飼育しているうさぎの食事を与える事が出来ているという事を頭の片隅に置いておく必要があると思います。


 ・牧草の燻煙(くんえん)燻蒸(くんじょう)

 日本国内に入れてはいけない外来の害虫を駆虫する為に行うのが 燻煙(くんえん)燻蒸(くんじょう)です。

これら燻蒸は色々な事が言われていて、実際どうなのかハッキリしないのが現状です。
私自身が、乾牧草をコンテナで輸入出来れば実際の事が分かるのですが、 流石に20フィート(20t)や40フィート(30t)のコンテナで仕入れが出来るほど 規模の大きい商売をしていないので、不可能で申し訳ない。

そこで、農林水産省と植物検疫、実際に食品輸入をしている方、某メーカー牧草 を輸入されている企業など、私の聞ける範囲で色々聞いたのですが、 皆さんから伺う話はバラバラです。

ただひとつ共通しているのは、『無燻蒸証明書』という物の存在が無いという事。 植物防疫に電話で問い合わせた時、そのような証明書の存在すらご存知ありませんでした。

燻蒸消毒をしたという『燻蒸処理証明』が発行されている事は貿易関係に携わる方は皆さんご存知でした。

しかし無燻蒸証明書という物が存在しているのも事実で、調べてみた所 、国家機関で発行されている書類では無く、社団法人などに依頼し検査後発行されるようです。
この辺りも、私が実際利用した事も無いですし、お話を伺った方々も利用した事がないようで正直 分かりません。

輸入の際に義務付けされているハズの燻蒸ですが、輸入の際に
燻蒸するかしないか選択する事も可能だと伺いました。
燻蒸されずに輸入された場合、日本に到着して植物検疫を受けた際に、指定害虫が付いていた場合は、 そこで燻蒸するか、返品(実質不可能 経費がかかりすぎ)か焼却処分されるので、リスキーでもあるとの事です。

燻蒸費用も輸出国で受けた方が格安のようで、国内で燻蒸にかかる費用は高額の為、 輸出国で燻蒸してから輸入される事が多いようで、日本に到着後、植物検疫で 燻蒸の際の薬品が抜けきっているか、安全性はどうかキッチリ検査されてから、 輸入業者の元へ運ばれる為に、何か問題が発生した場合は検疫で足止めを食らいます。。。

個人輸入をされた事がある方は、検疫で時間がかかる事、何かあれば確認の電話などが入ることはご存知だと思います。

狂牛病のおかげで、個人輸入の際にパッケージに牛の絵が入ってるだけで 必ず電話連絡でどのような製品か確認されます。

話を戻して...
殆ど燻蒸しない状態で輸入され、検疫で害虫が発見された時のみ燻蒸するというデータもあり、本当の所はどうなのか、 本当に分からないんです。
ケースバイケースという所でしょうか?


色々な方から話を聞けば聞くほど分からなくなる「燻蒸」なので、あまりおおっぴらに公言しにくく、余計に 情報が独り歩きしたり、不必要に怖がらせてしまう結果となっているのかも知れません。

それらをふまえた上で、あえてここで実情を明記してみました。

燻蒸という物を必要以上に恐れることは無いと思います。
今まで7年以上、輸入乾牧草を与え、飼育・繁殖をして来ましたが
農薬による中毒と思われる症例は特にありませんし、繁殖した子供や孫・ひ孫・やしゃ孫達に何か問題が出たとも思いません。

そして牧草に携わって来て、粉塵によるアレルギーは出てしまいましたが、農薬で手が荒れたり、その他問題は無いと思います。


 ・牧草の栄養

 胃腸と歯の為に大いに役立つ牧草ですが、食事としての栄養や
ビタミン・ミネラルの摂取としては不十分です。

全く栄養価が無い訳ではありませんよ。

生牧草にはビタミンAが豊富ですし、乾牧草はビタミンDが豊富です。
ただうさぎが健康に生きる上で十分なビタミンやミネラル、タンパク質の摂取が出来るかどうかと言われたら、正直牧草だけでは足りません。

胃腸と歯の為に牧草を食べ、足りない栄養素を補う為にペレットを与えます。

よく自然界のうさぎは「ペレットなんて食べていない」 「乾牧草なんて食べていない」と言われるのですが、 確かに自然界のうさぎはペレットも乾牧草も食べていません。
では、自然界のうさぎの寿命はどれくらいだと思います?
ペットとして飼育しているうさぎと同じ位長生きでしょうか?

生存競争の厳しい種というのは子孫繁栄の能力に秀でています。
うさぎは捕食される側の動物であり、いかに沢山の子供(子孫)を残すかが種の存続に関わる事ですので、 年中受胎可能な子宮を持っています。

今、皆さんが飼育しているうさちゃんは基本的に室内飼育でペットとして飼育されていると思います、
ここ数年でうさぎの寿命は飛躍的に延びたと思っています。
10年位前の飼育書では、うさぎの寿命は5〜6年とありますが、今10歳近いうさちゃんも多いと思いませんか?

ここ10年ほどで産業動物であったウサギが、ペットとして地位向上し、飼料に関しても、 野菜クズや総合栄養食だけでの飼育では無く、良質な乾牧草などが食事に加わることで、 うさぎにとって理想的な粗繊維という物が内蔵機能を活発にし、結果寿命が延びて来たのだと思います。
勿論、飼育者の知識や獣医師による診療の内容の向上も大きな要因であると思います。

ペットとして飼育する以上、自然界のうさぎと食事内容だけを 単純に比べる事は出来ないと思います。

長くなったので、産出国や成分表はそのうちまた別で纏めます。
成分表をメインに持って来なかったのは、成分より 役割や摂取量に関心を持って欲しかったからです。

成分的にあれこれ言った所で食べなければ机上の空論で終わってしまいます。
イネ科の乾牧草であれば沢山食べる物を見つけて与えて欲しいと思っていますので、 成分表では無く、牧草の役割と植物としての牧草を知って欲しいと思います。


 ・牧草と窒素

ちょっと難しいかも知れませんので、必要な部分のみ
赤文字にしますね。
詳しく知りたい方は全文読んで下さいまし(^-^;

 牧草も植物ですので、種から発芽して育つ過程で栄養が必要です。
人為的に施す肥料とは別に自然界に存在する元素も重要です。

自然界すべての元素が必要な訳ではなく、その元素が必須であり、他の物で代用出来ないなどの条件があるのですが、それらを満たすものが植物育成に欠かす事の出来ない必須元素となります。

現在、必須元素とされているのは16種、今後も増える可能性もあるようですが、 認められていなくても植物の種類によっても特別必要な元素があり、 私達が扱うイネ科の植物にはケイ素、窒素固定植物(マメ科など)にコバルトが重要だそうです。

植物育成に必要な元素のうち植物が必要とする量から、多量要素と微量要素の2つに分かれるのですが、窒素は多量要素に分類されます。

植物における、窒素の生理作用は下記の通り。。。

・原形質の主成分であるタンパク質構成要素
・光合成に必要な葉緑素、各種体内代謝を促進する酵素、ホルモン、細胞分裂、遺伝にあずかる核酸など植物体中で重要な働きをする物質の構成元素
・生育を促進し、養分吸収、同化作用を盛んにする

少し難しい言葉で拒否反応が出てませんか?(^▽^;)

要は、植物を育てるのに窒素というものが必要であるという事です。

では「残留窒素濃度」がどういう仕組みでどう悪いのか?

残留窒素=硝酸窒素、硝酸性窒素残留とも呼びます。
植物が根から窒素を吸収する際、無機質レベルまで小さくしないと吸収できません。
元々の大きな有機態窒素を土の中に居る様々な微生物(細菌類)が
分解して植物の根で吸収出来るレベルにしてくれるのですが、
その時に窒素、アンモニア態窒素、硝酸態窒素と名前と形を変えるので、 窒素→硝酸窒素と変わります。

植物が必要としている以上の窒素を肥料として施した際に、植物に過剰な窒素が蓄積されたり、 窒素を利用して成長するシステム=光合成が日照不足(天候悪化や曇りが続くなど)で、窒素を利用出来なかった場合も 植物自体に蓄積されてしまいます。
この、過剰な窒素の蓄積が問題となる残留窒素です。

育てる植物の成長する次期、休眠期も知らず、適当に肥料を入れて、 日照なども考えず適当に育てたら適当な物しか作れません。

という事かな?

植物に過剰に蓄積された硝酸窒素は、体に取り込む事により 有害な
亜硝酸という物質に変わります。

亜硝酸態窒素は血液中のヘモグロビンと結合し血液の酸素運搬機能を奪い極度の酸欠状態と呼吸作用の阻害をもたらす危険性があります。
また、脂肪族アミン類と反応すると発がん性の高いニトロソアミン体になります。

うさぎに限らず、硝酸窒素は私達人間にも有害で、ここ数年、無農薬・有機栽培農法の野菜など安全性を追求した後、 残留硝酸窒素濃度に目が向けられました。

先に話た中で、植物の根が窒素を吸収する際、無機質レベルで吸収すると書きましたが、 化学肥料であれ、有機肥料であれ、無機質での吸収は同じで、どちらの肥料であれ過剰な肥料と日照不足は硝酸窒素濃度が上がります。

人間にもうさぎにも、出来るだけ硝酸窒素の少ない野菜を摂取する事が安心で安全です。


いくら有機農法で作られた野菜でも、肥料を過剰に与え日照不足の場合は、安全と言えません。
生産者を信じるしかありませんが、残留窒素を多く含む野菜の色は、健康で十分に光合成をした物と比べると色が違うそうです。

綺麗な緑、薄い緑、野菜の色は様々ですが、くすんだ灰褐色がかった濃い色は、窒素を蓄積しているそうです。

硝酸窒素は灰汁であり苦味があるので、基本は生で食べるような野菜や生産物では 管理して作っていると思います。

うさぎ用の生牧草を生産されている企業やメーカーも、 そこはきちんと管理されているので安心でしょう。

どれも同じに見える生牧草でも、試食しましたが味が其々違います。
私達が食べる野菜でも、美味しい物、まずい物、味の濃い物、薄いものがあるよに、 うさぎが食べる牧草も私達が分からないだけで、どれも味が違うと思います。

乾牧草を試食するのは勇気が要りますが、うさぎに与える生牧草やその他葉物野菜も、一度味見してみてはどうでしょう?

ただし、飼い主さんの味見は自己責任でお願いしますね(^▽^;)